90年代のメタル話(1)

ブラック・サバス・ディヒューマナイザー Dehumanizerは本当に駄作だったのか?

ブラック・サバスが1992年に発表した「ディヒューマナイザー Dehumanizer」は、発売当時に滅茶苦茶な程に叩かれまくったアルバムである。
特に雑誌等のプレスは散々に酷評しまくり、存在を抹消したいほどの駄作だと攻撃を繰りかえしていた。

時代的にグランジオルタナが隆盛し、メタルアーティストが苦戦を強いられレーベルドロップを始めたあたり。

そのグランジオルタナ勢が攻撃するならまだしも、率先して飽和攻撃を行っていたのは、誰あろうメタル陣営だったのが興味深い。

これには、90年代的な時代背景がある。

当時メタルのプレスは、新たなカウンターカルチャーだったグランジオルタナを敵として認定し、紙面で攻撃を繰りかえしていた。

なぜ敵として認定してしまったか?
それは、カウンターカルチャーが起こる時、新しき者は古き者を揶揄するものであるが、それが顕著だったこと。
誰だって自分の好きな音楽を貶されると、ムカつきますわな。
また、リフなどで旧態然とした影響を受けつつも、彼らがそれを否定したこと。
何より決定的だったのは、今までクールとされてトレンドのトップだったメタルが、聞いていると恥ずかしい音楽に成り下がってしまった為に、それを愛好する者が焦りを感じていたからだろう。

だから、ディオがブラックサバスに復帰したと聞いて「ヘヴン&ヘル Heaven and Hell」のような様式美を期待していたところ、出来上がったのはヘヴィネスさに重きをおいたものだった為に、憎さ100倍になってしまったのではなかろうか。

あの頃、メタル系雑誌の「モダン化」に対する神経質さは、魔女狩りのような様相を呈していて、少しでも音が暗くなっていれば「裏切った」と書き散らし、それに賛同するメタルファンを巻き込んで波状攻撃を行っていた。

ストラトを使っていたギタリストが、ハムバッカー搭載のギターを弾いただけで攻撃された例すらある。

ここまで行くと「正気じゃねぇ」というレベルだが、当時のメタルファンっていうのは、ターザン山本に騙されるプロレスファンのように「正気を失っていた」んだろう。

さて、肝心の「ディヒューマナイザー Dehumanizer」だが、聞いたとおりカッコイイのである。
ケチョンケチョンに貶されるレベルではないだろう。

ジー在籍時から評論家などをやっている人達からすれば、相容れないのかもしれないが…。多分、ディオということでフックのあるメロディでも求めていたのかも…。

でも、ディオってレインボー初期とソロの初期くらいじゃないかな、良いメロディを書いていたのって。
しかも、そんな打率が高かったわけじゃないし。
おそらく、後年のディオ作品を認められなかった人っていうのは、何十年経っても、キャッチ・ザ・レインボーやスターゲイザーを求め続けていたのかも。
正直、自分の好みでしかないが、80年代的なバブルガムバンドの臭いメロディのほうが、よほど辛いよ。

それに今聞くと、全然ヘヴィでもなければ、メロが無いわけじゃないしね。あくまで2013年になった今の意見だけど。

自分はブラックサバスのアルバムは全部好きです。特にマーティンの「ティール Tyr」が好きかな。

昔から聞いてる人は、最初の5〜6枚だけしか聞かないみたいだけどね。


ちなみに、グランジオルタナ陣営は初期のサバスを異常に評価し、それ以外を一切認めていなかった。
メタルもグランジオルタナも、やってること同じやんけ…。


マーティン時代。こっちは様式美を追求した作品だったが、それでも評価はされなかった…。いったいメタルファンは何を求めていたのだろう…。
マーティンに華がない、髪の毛が薄いとか、そんなことばかり話題になっていた感がある。
Black Sabbath - Cross of Thorns
http://www.youtube.com/watch?v=ZR-wgQNrR1U

Black Sabbath - The Battle Of Tyr / Odin's Court / Valhalla
http://www.youtube.com/watch?v=HEUrhtxo7aE